CTime-of-flightTOF)法

蒸発冷却によって、原子集団がボース凝縮したとしても、そのままでは確認のしようがない。そこで用いられるのが、Time-of-flight(TOF)法である。

蒸発冷却終了後、磁気トラップコイルの電流を瞬間的に切り、原子集団をトラップから開放する。その後、原子集団は初期の速度分布に従って拡散しながら、重力によって落下する。ある程度の時間が経てば、原子集団の空間分布は、初期の速度分布を反映した形になる。この空間分布を観察するため、図6のような吸収イメージング法を用いる。観察したい時刻に、原子の光学遷移に共鳴したレーザー光を、パルス的に原子集団に照射する。原子集団によって吸収されたレーザー光の影は、レンズによってCCDカメラ上に結像され、撮影される。こうして撮影された画像(TOFイメージ)から原子の個数、速度分布、温度などが見積もられる。

        図6 吸収イメージング法

7は、蒸発冷却における交流磁場の最終掃引周波数を、0.70MHzから0.62MHzまで0.02MHz間隔で変えて実験したときの、一連のTOFイメージである。落下時間は28msで、空間分布は、ほぼ速度分布に対応している。0.68MHzまでは、分布はガウシアン型で、その幅から原子集団は約300nKまで冷却されていることがわかる。0.66MHzにおいてガウシアン分布の中央に、鋭い密度のピークが現れる。ボース凝縮相の出現である。0.62HMzでは、ほとんどすべての原子はボース凝縮相に落ち込んでいる。凝縮相が楕円をしているのは、磁気トラップの形の非等方性によるものであり、ボース凝縮の証拠の一つである。

図7 ボース凝縮への相転移。画像は、磁気トラップから開放されてから28ms後の原子集団の影である。左のグラフは、画像から計算された原子の空間的密度分布を表す。

 

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