3.ボース凝縮相の性質

ボース凝縮相が、単なる非常に密度の高い原子集団と違う所は、それがたった一つの波動関数で記述される、という点である。このことを劇的に示したMITグループの実験を、ここで紹介する[9]。彼らは、図8左のように、独立なボース凝縮相を用意し、それらを磁気トラップから開放し、互いにオーバーラップさせた。図8右は、開放から40ms後のTOFイメージである。オーバーラップした部分に干渉縞が現れている。この実験事実から、独立なボース凝縮相間には特定の相対位相が存在し、かつ、その相対位相が凝縮相全体(〜0.5mm)にわたり均一であることがわかる。つまり、拡散したボース凝縮相は、コヒーレント長が0.5 mmの物質波となっている。ちなみに、常温のルビジウム原子のコヒーレント長(熱的ドブロイ波長)は、0.1Aである。

この他にボース凝縮特有の性質として、集団励起モード[10]、3次のコヒーレンス[11]、ジョセフソン効果[12]、などが実験的に観測されている。超流動ヘリウムや超伝導体でみられる渦糸状態は、実現手段が色々考案されているが、今だに観測されていない。

図8.独立なボース凝縮体間の干渉。右の画像はMITケタリーのグループのホームページ(http://amo.mit.edu/~bec/)から転載。

 

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