1.アルカリ原子気体のボース凝縮

1925年にEinsteinは、理想ボース気体において、ある温度以下では最低エネルギー状態を占める粒子数が巨視的な大きさになる現象−Bose-Einstein凝縮−を予言した。液体ヘリウム4の超流動、金属や酸化物の超伝導は、このボース凝縮の表れと考えられている。しかし、これらの系では粒子間の相互作用が大きく、単純な理想ボース気体のモデルで現象を完全に説明するのは困難である。

1995年に実現されたアルカリ原子気体のボース凝縮 [1,2] は、まさしくEinsteinが当初想定していた理想ボース気体に近い系、つまり粒子間相互作用の極めて小さいで実現された。この点で、アルカリ原子のボース凝縮相は、超流動、超伝導とは違う新しい物質の状態であると言え、物理学上非常に興味ある研究対象である。

現在までにボース凝縮が実現されたアルカリ原子は、ルビジウム [1]、ナトリウム [2]、リチウム [3] 3種、更に水素原子 [4] でも実現されている。昨年、我々のグループはルビジウム原子を用いてボース凝縮に成功した。本稿では、我々が用いたボース凝縮生成の実験的手法を説明する。また、ボース凝縮特有の性質について簡単に紹介したい。

 

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