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光子数スクイーズド状態とサブポアソン状態

狭義の光子数スクイーズド状態は、第2章で述べたように定義されるが、 tex2html_wrap_inline995 がSQLよりも小さければ、様々な応用が可能になるので、このような状態のことをサブポアソン状態と呼ぶ[23, 24]。 サブポアソン状態の一番簡単な発生法は、電流注入型の発光素子を用い、そこへ注入する電子をサブポアソン化して、その低雑音性を光子に「伝染」させる方法である[23]-[27]。

数の揺らぎを表す量として、SQLで規格化したFanoファクターという量が用いられる。

equation677

半導体発光素子から発生する光のFanoファクター tex2html_wrap_inline1097 は、注入する電子のFanoファクター tex2html_wrap_inline1099 と次のような関係にある[24]。

  equation679

ここで tex2html_wrap_inline1101 は、一個の電子が注入されてから tex2html_wrap_inline1103 までの時間の間に1個の光子が放出される確率である。 tex2html_wrap_inline1105 は、 tex2html_wrap_inline1103 という時間間隔の中に含まれる光子数の揺らぎを表す。電子のサブポアソン化は、電源と発光素子の間に直列に抵抗体をはさむことにより実現できる。抵抗体の抵抗が発光素子の(微分)抵抗よりも十分大きく、かつ、ショット雑音レベルに比べてジョンソン雑音(熱雑音)が十分小さければ、 tex2html_wrap_inline1109 とみなせるgif。後者の条件は、 tex2html_wrap_inline1111 の時満たされる[27]。ここで、 tex2html_wrap_inline1113 はボルツマン定数、Tは抵抗体の温度、eは素電荷、Vは抵抗両端の電圧を表すgif

これまでに報告されている最も大きな光子数のスクイージングは、半導体レーザーを使って実現されている[29]。図4にその実験結果を示す。

  
Figure: 半導体レーザーによる光子数スクイーズド状態の発生

aがSQLを表しており、サブポアソン化された場合のdは、それより8.3dB小さくなっている。これはFanoファクターに直すと tex2html_wrap_inline1123 である。用いられたレーザーの(微分)量子効率は0.57で、この実験結果は、(25)式の予想と食い違っている。この食い違いは、レーザーの内部に存在するnonlasing junctionの存在により説明されている。

発光ダイオードを用いると非常に容易にサブポアソン光を発生することができるgif。発光効率も素子によっては50%を越える場合もあり、元々発振閾値がないので非常に微弱なサブポアソン光が発生できる可能性があり興味深いといえる。発光ダイオードを使った実験の例を図5に示す[32]。

  
Figure: 発光ダイオードによるサブポアソン光の発生

この実験の場合観測されたFanoファクターは観測時間の長い場合 tex2html_wrap_inline1081 0.65で、これはトータルの量子効率34.7%と良く一致していた。



Takuya Hirano
Fri Jun 20 16:25:04 JST 1997